みなさん、こんにちは。
昨日、開催中の特別展「伊藤知紗 絵本原画展~昆虫観察日記~」のギャラリートークを開催しました。
〈ギャラリートークの様子〉
絵本作家の伊藤知紗さんに、展示で取り上げた2作の絵本、そして絵本作りについてお話していただきました。
〈絵本作家の伊藤知紗さん〉
絵本を作る際のこだわりとして、〝実際に見たものを描く“と仰っていたことが印象に残りました。
当たり前のように思えるかもしれませんが、実践するのは大変です。
「むし、おきあがれるかな」では、虫の起き上がりの様子を実際に見るだけでなく、写真や動画を何度も見直して描いたそうです。
ダンゴムシが起き上がるための、こちらに腹部を向けた描写の難しさ、テントウムシが一瞬翅をひろげて起き上がる様など、一枚の絵になるまでには、苦労と工夫が詰まっているということがよくわかりました。
しかも、絵本には登場しなかった虫たちも観察しているのですから、大変なものです。ですが、実際に見たものを描くことで、絵に説得力が生まれるのだそうです。
伊藤さんのブログも参照してみてください。
新刊本 てくてく日記 (fc2.com)
「うんちみたいな、むしがいた」でも、住まわれている飯能市で実際に出会った虫たちと自然を題材にしています。
〈擬態する虫について〉
伊藤さんは数箇所定期的に巡回している観察スポットがあり、普段から観察を続けることで細かな変化や発見をして、そうした経験を基に絵本に活かしているのだそうです。
絵本での自然描写も、観察したものと全く同じではありませんが、鳥糞擬態する虫たちの食草や食痕に至るまで、とても気を配って描かれています。
絵本として表現することについては、ラフ原稿(絵本にするためのイメージを描いた下絵、スケッチ)を基に、どのように絵本の構成が変わっていったのか語られています。
これはとても興味深く、編集者とのやり取りの中から、テーマを見つめ直して、内容をそぎ落としたり、追加したりしながら絵本の体裁になっていくとのことでした。
具体的には、「むし、おきあがれるかな」では、登場する順番が当初はカブトムシが初めだったのを最後に回すことで、庭先にいるようなダンゴムシから、徐々にテントウムシ、オジロアシナガゾウムシ、カブトムシと林・森へと導かれる形をとっています。
〈絵本のラフ画との違い解説〉
絵と写真との表現方法について。
写真絵本など、絵本を写真で表現することは可能です。それでも絵で表現するについて、描き込まないことで想像させることができると仰っています。
確かに写真はリアルな表現手法ですが、小さな子どもが怖がってしまうこともあるそうです。
でも、絵であればタッチを変えることで柔らかいタッチも、デフォルメを加えることも可能です。
そして、描くことで生まれる絵の余白、絵と絵の間から次への展開を想像させることができるのです。
ギャラリートークに参加された方も、自然に詳しい方、何度も展示を見に来てくださっている方と関心の高い方ばかりでした。
ギャラリートークの時間が終わっても、伊藤さんとの虫談義、絵本談義が尽きないようでした。
〈参加者との質疑のようす〉
展示は9月24日(日)まで開催しています。
「てくてく日記コーナー」の展示替えも予定していますので、ぜひご来館ください。